1997年(平成9年)スタジオジブリの長編アニメーション「もののけ姫」は宮崎駿監督により制作されました。(↓は公式予告です。)
この映画のすごいところは、当時の興行収入記録193憶円を打ち立ててしまったことだけでなく、いまだに金曜ロードショーなどで放映すると、視聴率2桁を取れる鉄板映画であるというところもあります。
声優陣も充実していて石田ゆり子さんや田中裕子さん、美輪明宏さんといったそうそうたる顔ぶれです。
今回は、映画の冒頭で、アシタカが戦闘するタタリ神に取りつかれていく乙事主について、紹介していきたいと思います。ネタバレを含みますのでご注意下さい。
タダで見る方法はこちら↓もののけ姫、最後のアシタカの
— はまちハチコ@魚野郎 (@Hamachi_H) August 13, 2021
「シシ神は死んでいない、命そのものだから」
ってセリフが深すぎて好きすぎる。
小さい頃は怖いなあと思いながら見てたけど、大人になって見返すとホントに色んなものが見えてきて神作。
目次(各項目をタップすると、その項目に飛びます。)
乙事主(おっことぬし)はなぜタタリ神になったのか
続き→
ちなみに乙事主は500歳、モロは300歳という設定です❣😆😆😆
この力強いイノシシ神、乙事主の声を演じたのは2009年に亡くなった森繁久彌さんです😃#kinro #もののけ姫 #乙事主 #おっことぬし #森繁久彌 #モロ #イノシシ神 #ヤックル pic.twitter.com/iViPKS7Sj0— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
乙事主は、4本の大きな牙を持つ巨大な白い猪神です。500歳という高齢で猪神たちの中で最長老でした。
乙事主は、視力を失っていましたが、嗅覚と経験値によりたくさんの猪神らを率いていました。
猪ということもありますが、他の猪神を率いて人間を攻撃するだけのことはあり、ものすごく勇気と胆力を備える猪神でした。
そもそも、タタリ神はどのようなものに憑依するのかというと、正常な精神を失ってしまうと、その弱い精神から寄生するのです。
冒頭にタタリ神となった猪神はの名はナゴの守と言います。
ナゴの守は、タタラ場に人が砂鉄を取りに森へやってきたところを退けようとしてエボシに銃弾で撃たれました。
そして、死の恐怖でタタリ神となり、アシタカの村を襲うこととなったのです。
次に乙事主は、理性をもって人間に戦いを挑んでいたのですが、銃撃に傷つくうちに、理性を失い、復讐と憎悪に支配されてしまいました。
この復讐と憎悪からタタリ神に寄生され、されつくして、完全なタタリ神におちてしまったのです。
タタリ神の由来やモデルは何
(アシタカ)鎮まれ!鎮まりたまえ!さぞかし名のある山の主と見受けたが何故そのように荒ぶるのか!?#kinro #もののけ姫 #しずまれ! #アシタカ pic.twitter.com/YERQfd0fGX
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「風の谷のナウシカ」の巨神兵や「千と千尋の神隠し」のカオナシなど、スタジオジブリの作品にはよくドロドロした不気味な化け物が登場します。
これらは、何か悪いものの副作用として発生したもののメタファーであることが多いです。
それは、核の廃棄物や工場からの廃棄物といったものの象徴であることが多いのです。
タタリ神もそのひとつです。映画の冒頭で登場するタタリ神の完全体は、もはや猪神の形を残していません。
このタタリ神は、足は8本あり、真っ黒でクモのような存在です。モデルはクモです。
タタリ神は、外から付着したというよりは、内部より体全体を覆いつくすような表現がされています。
「もののけ姫」におけるタタリ神は、自然に対する人間の傲慢な態度にたいする鉄槌のようなものでしょう。
タタラ場で、不必要な火や鉄から武器を製造する不自然な存在たちに対するものです。
タタリ神は、人間が生み出した公害のメタファーのようなものでしょう。
そして、その猪神の心の弱さ、欲望への弱さなどが表出するとそこに取りつき、内面をむしばんで、完全なタタリ神となるのです。
これも、人間の心の弱さや欲望にたいする弱さ、タタリ神(公害)を止める手立ては、己の中にあるということを表現しています。
タタリ神はどこから来たのか
続き→
今の勇ましいエボシがいるんですね❣
ちなみに、エボシの声を演じたのは田中裕子さん、ゲド戦記の「クモ」役も担当されていました。
エボシの声を演じるにあたり、宮崎駿監督🎬からは「宝塚風🕺🏼にならないように」というリクエストがあったそうです😉#もののけ姫 #エボシ #田中裕子 pic.twitter.com/foIXWjOllg— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
タタリ神が発生したのはタタラ場があったからです。
タタラ場は、エボシをリーダーとして戦乱の中で先端技術でもって、他国を制圧し、豊かになろうとするために、近代化を進めていました。この発展の過程で負の遺産(タタリ神)が生み出されたのです。
これは、日本の近代化の過程と合致するものです。
明治時代に、産業革命が興り、先進国の仲間入りをしようとし、急速な近代化を進めた。鉄を生産し、他国に売り、武器を作り、富を築きました。
その裏では、搾取されたり、病にかかったり、飢える住民や他国民がいました。
高度成長期においても、公害などを生み出しています。
こういった、人の欲望の負の側面として、タタリ神は自然発生的に表われ、猪神に憑依するようになったのです。
おそらく、猪の動物的特性である盲目的に突進し、己の思うがままに突き進むところを人間の欲望と重ね合わせ、その向こう見ずな突進(発展)に対する警鐘としてタタリ神が現れたのです。
もちろん、ここに、科学的な説明は不要かと思います。
それは、神の現代文明に対する警告に他ならないのです。
まとめ
戦国時代の戦乱における、戦いが背景にあるものの、シシ神のような超自然的な存在や呪いといったファンタジーを取り込んでいる「もののけ姫」は、おそらく、人間な傲慢な社会に対する警鐘のメタファーでもあります。
アニメーション映画で興行収入記録などと聞くと、子供にも人気、大人にも人気、というすごい映画だと思います。
それは、あらゆる視点から映画を解釈できるようなストーリーであるから、様々な世代、性別の人たちが楽しめるのです。
特に、社会問題にも触れながら、ファンタジーな世界と現代世界をミックスした世界を作り上げているところは、本当に秀逸だと思います。
深い洞察力と批判的精神を持つ宮崎駿監督ならではの作品です。
乙事主がタタリ神になってしまったのは、平常心を失い、怒りと憎しみと化してしまったからでした。
そして、タタリ神のモデルはクモであり、人間の欲望が生み出した化け物でした。
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