「孤狼の血」は柚月裕子による長編警察小説シリーズで、全3部作です。
昭和63年の広島の架空の都市・呉原が舞台となっており、やくざ同士の争いに真っ向から挑む刑事2人を描いています。
キャストには役所広司のほか、松坂桃李、真木よう子、石橋蓮司、江口洋介といったそうそうたるメンバーが顔をそろえており、最高のエンターテインメントに仕上がっています(R15+指定)。
今回は、「孤狼の血」で大上は誰になぜ殺されたのか、死因や遺体の真相について紹介していきます。
また、役所広司の演技評価についても紹介していきます。
目次(各項目をタップすると、その項目に飛びます。)
「孤狼の血」で大上は誰になぜ殺されたのか?
やくざ映画で最も重要なテーマは、どこに価値観が置かれているかです。
極道が最も価値観を置くものは、義理や人情、メンツといった理屈では理解しにくい場合が多いです。
近年、暴力団排除の機運が高まって法律や条例が施行されてからは、やくざや暴力団そのものが消滅しました。
その結果、グレーな存在として会社を装ったインテリやくざなど、価値観を法律や理論、お金といったものに置き換えた存在が増えています。
「孤狼の血」は、まだ義理人情が色濃く残る、そして暴力団ややくざを取り締まる法令も完備されていなかった時代の呉原市で起こった出来事です。
このため、法律を盾に警官もやくざを摘発できないので自分可愛さに保身に走り、やくざも警官につぶされないぎりぎりで抗争ができています。
そしてそれゆえ、未整備な法律を補填するための大上のような存在が必要でした。必要悪という見方もできるでしょう。
しかし大上の14年前の真実や警察上層部の情報を知ると、大上は決して悪などではなく市民を誰よりも思う正義そのものでした。
「日本で一番悪い奴ら」などでは、主人公は始めは日岡のように市民の安全を守るまじめな警官として配属されていたものの、次第に裏社会に取り込まれてしまいます。ミイラ取りがミイラになってしまうのです。
やくざは、日々しのぎを削る厳しい社会を生きていますからいち警官を手なずけることなどわけないのです。
しかし大上の価値観は、「市民の平和」にあります。
五十子会、加古村組や尾谷組とつかず離れずの関係で重要な情報を握るとともに、警察権を行使しつつ抗争の一歩手前で市民を守っていたのです。
そして、大上の価値観はどこまでいってもやくざと交わることはないのです。
結論としては、五十子会に大上は殺されます。
殺された理由としては、加古村組と尾谷組の抗争を止めきれなくなったことが原因だと思われます。
やくざは、義理人情に最上の価値を置いていますし、そしてそれと共にメンツを重んじる社会でもあります。まさに「やられたらやり返す」の世界です。
しまを荒らされている尾谷組が加古村組をつぶしにかかるのは当然ですし、尾谷組ごときに五十子会幹部が襲撃をくらい、入院送りにされれば倍返しは当然です。
しかし間に入った大上は、その倍返しを止める交渉をさすがにできなくなります。
やくざにとって警官は利用できるうちは味方ですが、話をまとめられなければ情報を握っている分、危険な存在です。
大上は、五十子会に惨殺される結果になったのです。
大上の死因、遺体の真相について
大上の死因は、警察の発表では、「泥酔して、海に落ちて水死した。ほか捜査中」といった、事故死扱いとなっています。
最初、海から遺体が上がった直後は、「やくざの抗争を止めることができなくなってヤケ酒を飲んで海に落ちたのかもしれない」とも思いました。
しかし、やくざを生かさず殺さず飼いならしてきた大上が普通の事故死で終わるはずはないのです。
ましてや、やくざの情報を握るだけでなく、警察上層部の情報も握っていたのです。
ここで、やくざと警察上層部がずぶずぶにつながっていることがはっきりとします。嵯峨のような本当に悪い奴が裏ではぬくぬくと生きていたのです。
大上の遺体にはいくつもの刺し傷があり、また胃の中には、アルコールや薬物、豚のフンなどがありました。
海から上がった大上の膨らんだ傷だらけの顔を見て、水死してしまうと腐ったり、魚に食べられたりして、あのようになってしまうのかと思いましたが、実は五十子会による斬殺の結果だったのです。
上早稲が殺された養豚場と同じ場所で、アルコールを飲まされ続け、殴打され、フンを口に入れられ、多数刺され、斬殺の結果、海に投げ入れられたのです。
警察もやくざとずぶずぶでお互い大上に弱みを握られていることから、事故死として葬ろうとしたのです。
役所広司の演技について
「孤狼の血」観了。日本アカデミー賞に触発されて観たんだけど、役所広司は当然ながら、松坂桃李の鬼気迫る演技が圧巻。あまりに感動したので思わず本屋に走って原作を購入してしまった。ちなみに冒頭から目を覆いたくなるような拷問シーンがあるのでグロ耐性のない方は注意。https://t.co/aC1NRNznAw pic.twitter.com/FtJK6d1q8W
— 深爪 (@fukazume_taro) March 2, 2019
役所広司の演技は、当然の演技というのはわかりますね。
役所広司と松坂桃李を比較するのは酷というものですが、松坂桃李の鬼気迫る演技はたしかにすごいですね。
とはいえ正直、役所広司の演技がすごすぎて、比較にはなりませんでした。
「すばらしき世界」でも元やくざのすばらしい演技を見せてくれています。優しい男から凶悪な男、どんな役所も完璧にこなしますね。
『孤狼の血』
観てきました。アウトレイジと比べてしまう人もいるかと思うが、それとは全然違った刑事視点のハードボイルドな極道映画で、役所広司の演技がとにかく凄まじい作品でした。役所広司演じる暴力刑事が何のために戦っているのか、それを踏まえて観るとさらにおもしろいと思います。
【84点】 pic.twitter.com/t8m5sWop3G— みねさん@映画垢 (@inpakuto12345) May 12, 2018
「アウトレイジ」と比べる人が多いようですね。
ですが、北野映画では衝動的な殺人シーンやあっさりと殺してしまうシーンが多いように感じる一方、「孤狼の血」は殺人の動機やそこに至るまでの心情描写が明確ですとんと落ちるような感じがします。そして、殺し方のエグさが段違いですね。
そういった感じ方をするのは、役所広司の演技力が大きいと思います。あの圧倒的な存在感は、北野武を超えていると思います。そして、あたたかみも感じますね。
また、感触的には、アウトレイジの方が死人の数は多そうですが、圧倒的に「孤狼の血」の方が、痛いです。
『孤狼の血』は役者の演技も光ってた。白石監督が撮る役者は独特な雰囲気を纏ってる。
地元だから有名俳優が広島弁を喋る姿には笑ってしまったが、徐々に違和感は消え物語に引き込まれた。
役所広司の役作りはさすがで、酔って子供に絡む姿なんかは広島のオッサンそのもの。懐かしさすら覚える。見事! pic.twitter.com/SwRgQwKV0y— 柴波 (@T_hedgehog_) January 9, 2019
役所広司が広島弁をしゃべると迫力がありますね。はじめは違和感があったのですが、すぐなじみました。
広島のおっさんそのものになるので、さすが役所広司と思わされました。
役所広司はどちらかといえば優しい男を演じることが多いので(孤狼の血でも本質的には優しい男ですが。)、攻撃的なぎらぎらした演技には、驚かされます。
他のキャストも負けずに切れきれなので、Level2での演技も気になりますね。
まとめ
大上は、尾谷組と加古村組の抗争を止めるための交渉が決裂した結果、危険分子として五十子会によって殺されます。
死因は、泥酔による水死と事故死扱いを警察にされますが実際のところは、五十子会によってアルコール攻めにあった挙句、複数刺され、惨殺されます。
その後、海に投棄されます。
役所広司の演技は、最初から最後まで圧巻の演技で、迫力があります。
舞台が広島だけに、広島弁に当初違和感を覚える(これは、広島弁が下手だからではなく、いつもの役所広司の話し言葉ではないから。)が、すぐに広島のおじさん設定になじんできます。
広島弁の恐ろしさとやさしさを感じてしまいますね。是非、一度見てみましょう。
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